TCFD提言に基づく
情報開示

TCFD

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、2015年に金融安定理事会(FSB)により設立され、気候変動が事業に与えるリスクと機会の財務的影響に関する情報開示の枠組みを示しました。TCFD提言は、その後、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定したIFRSサステナビリティ開示基準およびサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が策定したサステナビリティ開示基準へと発展的に引き継がれ、現在の気候関連情報開示の重要な基盤となっています。

当社は、TCFDが企業に推奨する「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」のフレームワークに沿って、事業活動における気候関連のリスクと機会を評価し、積極的な情報開示とその充実に努めることが、企業の持続的な成長のために重要であり、脱炭素社会の実現に向けた企業の責務と考えています。
当社は2020年4月にTCFD提言への賛同を表明いたしました。TCFD提言に基づく気候関連情報開示を発展させ、2027年3月期より、SSBJ基準に適合したサステナビリティ情報開示を開始します。

ガバナンス

a. 取締役会による監督体制

当社グループは、サステナビリティ基本方針の下、成長戦略「Activate AI for Society」とサステナビリティを統合して推進するためのガバナンス体制を構築しています。取締役会は、サステナビリティに関する重要事項を審議・決議するとともに、サステナビリティ推進状況を監督しています。
当社グループは、経営理念・ビジョンと成長戦略「Activate AI for Society」を結びつける6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。その一つとして「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」を設定しています。経営監督機能の強化を目的に、取締役会の諮問機関としてESG推進委員会を設置しています。同委員会は、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOを委員長とし、独立社外取締役に加え、取締役および執行役員の中から委員長が指名した委員で構成され、当社グループのサステナビリティ活動に関する進捗(目標・KPIなど)をモニタリングするとともに、重要事項について取締役会に提言などや報告を定期的に(半期に一度以上)行っています。
取締役会がESG推進委員会からの提言内容を尊重し適切な意思決定を行うことに加え、取締役・監査役に求めるスキルの一つとして「サステナビリティ(気候変動を含む)」を設定することで、当社グループの経営に対するサステナビリティ視点の反映に努めています。なお、目標・KPIの一部は役員報酬に連動しています。

b. 経営層の役割

当社グループは、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOをESG推進の最高責任者として、取締役会の監督の下、当社グループのサステナビリティ対応の責任を担っています。また、常務執行役員 兼 CHRO(最高人事責任者)がESG推進担当役員として指揮を執っています。
さらに、気候変動・生物多様性・循環型社会に関する全社の戦略・計画立案・対応の検討・進捗管理を担う機関として環境委員会を設置しています。同委員会は、ESG推進担当役員を委員長とし、関連する各部門および子会社の組織長などを委員として構成しています。同委員会は、気候変動・生物多様性・循環型社会の重要なリスク・機会の評価および特定を行うとともに、これらに対応するための計画の策定・推進、対応進捗のモニタリングなどを行っています。同委員会で審議・検討された事項についてはESG推進委員会へ適宜報告しています。

監督体制

監督体制

戦略

a. 気候変動に関わる
リスクと機会

気候変動により将来予測される事象に適応する戦略を勘案するために、全社で自然環境に関わる事業リスクを選定し、急速に脱炭素社会が実現する1.5℃シナリオと気候変動対策が進まず温暖化が進行する3-4℃シナリオの2つのシナリオ分析を実施し、バリューチェーン上流下流を含む事業に与える財務影響が特に大きい今後30年間に発生が予見されるリスクの洗い出しを実施しました。一部のリスクについて外部シナリオなどを参考にシナリオ分析を実施した結果、通信設備の被災による物理的リスクが財務計画に大きな影響をおよぼす可能性があることを認識しています。以下に結果を記載します。

財務影響度

リスクタイプ 検討した
財務影響
シナリオ※1 財務影響度※2
短期 中期 長期
物理
リスク
急性 気候変動の進行と生態系劣化に伴う、自然災害激化による被害拡大 基地局設備等の被害増加による復旧コスト、資産への影響 1.5℃
3-4℃
災害対策コストの増加 1.5℃
3-4℃
慢性 気温上昇、水ストレス地域の拡大 空調コスト増 1.5℃
3-4℃
移行
リスク
市場 低炭素・脱炭素市場の拡大、顧客の行動変化、嗜好変化 再生可能エネルギーの電力提供への投資コスト増加 1.5℃
評判 ステークホルダーにおける低炭素・脱炭素嗜好の高まり 脱炭素の取り組み不足と判断された場合のブランドイメージの低下による売上の減少、株価の低下
政策と法 規制強化 炭素税導入によるコスト増
技術 省エネ技術等、脱炭素に寄与する技術の進展 投資コストの増加
[注]
  1. ※1
    外部シナリオ
    1.5℃シナリオ
    IEA WEO 2025(Net Zero Emissions by 2050 Scenario:NZE/Stated Policies Scenario:STEPS)
    IPCC(SSP1-1.9)
    脱炭素の取り組みが加速し、ネットゼロの実現に向けて各国で炭素税の導入が進んでいる。日本では、2020年度と比較して気温が0.5℃上昇し、猛暑日も増加傾向にある。これに伴い、オフィスや店舗、データセンターなどの空調関連の電気使用量が増加している。
    3-4℃シナリオ
    IEA WEO 2025(Stated Policies Scenario:STEPS)
    IPCC(SSP5-8.5)
    炭素税の導入が進まず、低価格で推移している。日本では、2020年度と比較して気温が1.6℃上昇し、猛暑日は約6.9日増加している。空調需要の増加が加速し、オフィスや店舗、データセンターなどの空調関連の電気使用量が一層増加している。
  2. ※2
    時間軸:短期(数年以内)、中期(3~5年程度、中期経営計画と同等)、長期(10年~30年程度)

b. 戦略および財務計画への影響

当社は国内通信事業を主力サービスとし、2025年度は連結で2,975,461MWh(カバレッジ100%)の電力を全国約30万局以上の基地局をはじめとするネットワーク設備の運用で使用しています。AI(人工知能)の普及が進むことによりデータセンターなどの電力需要の急増が見込まれる背景を踏まえ電力量は増加する見込みです。また、日本の国土面積の68%は森林で、南北に長い国土の中央を急峻な山脈が貫く山岳地形のため、河川は短く急流で、また脆弱な地質地盤が多く、梅雨後期や台風シーズンには局所的豪雨による土砂災害や洪水被害、それに起因する停電のリスクがあります。

3-4℃シナリオ

気候変動対策の強化をはじめとする政策・法規制の強化や、技術、市場、評判などの移行リスクは限定的である一方、異常気象の激甚化による急性のリスクや気温上昇、水ストレス地域の拡大による慢性のリスクが生じると仮定し、過去10年で発生した大雨特別警報の豪雨による当社被害がもっとも大きかった2019年度の復旧コスト7.7億円などを参考に、将来発生が予見される財務への潜在的影響を試算しました。

  • 物理リスク(急性)

    生物多様性の損失による森林の防災機能低下により、地球温暖化の進行による自然災害の頻発・激甚化に伴う基地局など通信設備の災害対策や復旧によるコスト増、バリューチェーンの断絶による調達への影響、ビジネス機会損失、被災設備による近隣被害の誘発などを潜在的リスクと認識し、過去の当社コストを指標とし、将来発生が予見される財務への潜在的影響を検討しました。
    その結果、人件費をはじめとする復旧にかかるコストは限定的なものの、通信設備、特に基地局は全国に多数設置されており、その資産規模を踏まえると、災害による財務的なインパクトは大きいと想定しています。また、高リスク設備を中心に通信設備の強化対策を行った場合も、頻発化、激甚化する気候災害のリスクを完全に排除することは困難であり長期リスクとして発生可能性が高く、大規模に発生した場合には通信サービスが途絶し社会的責任が生じると考えています。
    対策として、国土交通省の洪水浸水想定区域データを使用し、屋外に設置したすべての基地局(屋上等を除く)を対象に物理リスクの評価を実施した結果、関東地方および中四国地方の沿岸部および河川部のリスクが特に高いことを確認しています。一例として令和元年10月の台風19号発生の際には、関東地方を含む広範囲に記録的豪雨による河川の氾濫や土砂災害をもたらし、死者・行方不明者は100名を超え、当社の多数の基地局も水没や停電など甚大な被害をうけ通信できないエリアが発生しました。台風や線状降水帯の発生回数の増加に伴い、発生確率が上昇傾向にある洪水被害への適応策として、設備破損リスク低減、広域停電時におけるサービスの安定的に継続するために、2025年度は約14億円を投資し主に以下の計画を策定・実施しました。その結果2025年度に重大なエリア支障につながる事案は発生しませんでした。基幹ネットワークの冗長化を進め、災害時の通信サービス環境の確保に努めています。

    • 可搬型基地局の配備
    • バッテリーのリプレイスおよび保守対応
    • 可搬型発電機の配備
  • 物理リスク(慢性)

    空調使用の増加によるコスト増、海面上昇や気象災害による低地などの増水リスクへの対応のためショップを閉鎖することによる売上の減少、地球温暖化と生物多様性の劣化の影響による洪水、渇水など水ストレスに伴う、半導体供給遅延などによる調達への影響、データセンターのサーバー冷却水等の事業用水確保に伴う影響を検討しました。当社はAI(人工知能)の普及が進むことによるデータセンターの電力需要増を見込んでおり、当社設備の電力使用実績と気温データの相関関係からコスト算出した結果、一定のインパクトがあると想定しています。対応策として省エネ設備への転換、AI・IoT活用による電力使用の効率化、オンラインショップの拡大を進めてまいります。

1.5℃シナリオ

事業に影響を与えるレベルの気候変動による急性あるいは慢性の物理リスクは生じない一方、気候変動対策の強化をはじめとする政策・法規制の強化や、技術、市場、評判などの移行リスクが影響をおよぼす可能性を検討しました。

  • 移行リスク(市場/評判)

    パリ協定の目標達成に向けて企業に対する野心的な目標の要求は年々高まっており、当社の取り組みが対応不足と判断された場合の売上や株価、ブランドイメージなどへの影響、また自然資本の枯渇や社会不安による経済影響に伴う事業影響について検討しました。
    その結果、TCFD開示提言に基づく積極的な情報開示や、カーボンニュートラル実現につながる活動推進、対外開示を通じた低炭素経営へのコミットメントの明確化、社会全体のCO2削減への貢献、ネット募金などによる人々の行動変容の促しなどの取り組みにより企業価値の向上に努めることは優先的に取り組む事項であることを認識し、2020年4月にTCFDに賛同し、マテリアリティの一つとして「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」を設定しました。
    長期的には、資源枯渇と市場需要増による原材料のコスト増が考えられます。当社は、資源の有効活用のために、使用済み携帯電話リユース/リサイクル回収台数、撤去基地局通信設備リサイクル率、産業廃棄物リサイクル率をマテリアリティのKPIに設定しモニタリングしています。
    また、低炭素・脱炭素市場の拡大、顧客の行動変化、嗜好変化により、再生可能エネルギーの調達など、脱炭素サービス提供のための投資コストが増加すると考えられますが、一方で当社にとっては機会となりえます。

  • 移行リスク(政策と法)

    気候変動対策の政策・法規制(地球温暖化対策のための税、地球温暖化対策の推進に関する法律など)が強化されると仮定し、2030年度にCO2換算1t当たり30,000円程度の炭素税が課された場合の影響額を試算しました。国内において現時点での発生可能性は低いと考えていますが、発生した場合には一定の財務影響が生じます。なお、対策として当社は、2030年度までに事業活動で使用する電力をカーボンニュートラル電力※1100%にすることを目指し取り組みを進めています。あわせて、目標達成に向けて、再生可能エネルギーの長期調達契約(PPA※2)を締結するなど、再生可能エネルギーの活用を進めています。2023年6月には、2050年度までにグループ連結でスコープ1、2、3を含む事業活動に関連する全ての温室効果ガス排出量(サプライチェーン排出量)を実質ゼロにする「ネットゼロ」の達成を宣言しました。
    これらの取り組みにより、将来的な炭素価格上昇による財務影響の低減を図っており、本リスクの影響は限定的であると考えています。引き続き、国内外における炭素賦課金制度や関連法規制の動向を注視するとともに、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。

    [注]
    1. ※1
      排出係数が0の電力
    2. ※2
      Power Purchase Agreement:電力販売契約
  • 移行リスク(技術)

    省エネルギーや省資源、AI、IoTなどの脱炭素に寄与する技術の進展に伴い、これらの技術を活用した設備やサービスへの投資コストの増加が見込まれます。また、新たな技術への対応が遅れた場合には、サービス競争力の低下や事業機会の逸失につながる可能性があります。技術動向を継続的にモニタリングするとともに、戦略的アライアンスや共同開発パートナーとの連携を通じて、脱炭素に資する技術の導入・活用を推進し、競争力の維持・向上に努めています。

    当社は国際的な非営利団体であるCDPを通じて、気候変動をはじめとする環境情報の透明性を高めるための積極的な情報開示を継続的に実施しています。
    事業活動における気候関連リスクの具体例については、下記の当社CDP質問書への回答結果をあわせてご参照ください。

    CDP質問書 2025|c3.1 リスクの開示(英語)

リスク対応策、機会

事業リスクを低減するための対応は、同時に大きな事業機会ともなり得ます。AIやIoT、ビッグデータなどの最先端テクノロジーを活用し、膨大な環境データをAIの学習機能によって分析することで、地球環境に与える影響が予測できるといわれています。その予測からさまざまな対策を打てるようになるため、環境問題における最先端テクノロジーの活用は世界で注目されています。当社が強みとするAIやIoTなどの最先端テクノロジーやグループ企業とのシナジーを最大限に活用し環境負荷の軽減に取り組みます。なお、当社が展開する気候変動対策関連の事業の一部(携帯電話端末のリユース品、防災向け水循環システムの販売、スマートビル等)は、EUタクソノミーに適合する持続可能な経済活動として位置づけられています。このような事業は社会ニーズの高まりを背景に2025年度は930億円の売上を創出し、中長期的な企業価値の向上に資する成長機会と捉え、今後も戦略的に事業を推進してまいります。
下記に取り組み例を記載します。

  • データを活用したエネルギー効率の向上「スマートビル」

    当社は、都市空間や建造物に配置したセンサー群から収集される稼働データを即時に役立て、利用者に最適化された空間とエネルギー利用の効率化を実現するスマートビル・スマートシティの開発に取り組んでいます。2025年度は本サービスの提供を通じて、年間で約110億円の売上を創出しました。

  • CO2排出量実質ゼロ「自然でんき」

    当社は、気候変動対策に寄与する環境配慮型サービスとして、家庭向けプラン「自然でんき」を提供しています。「自然でんき」では、再生可能エネルギー指定の非化石証書を組み合わせることで実質的に再生可能エネルギー比率100%、CO2排出量ゼロを実現することを定義としており、再生可能エネルギー普及を通じた豊かな社会の実現を目指しています。
    また、社内においても再生可能エネルギー発電所(水力発電所)の現場説明会を実施し、再生可能エネルギーや環境価値に関する知識向上に取り組んでいます。
    2025年度は「自然でんき」の提供を通じて、年間約19.7億円の売上および約4.4万t-CO2のCO2排出量削減効果を創出しました。

  • 家庭向け節電サービス「エコ電気アプリ」

    当社は、ソフトバンクでんきをご利用のお客さま向けに、スマートフォンアプリを通じて節電を呼びかける「エコ電気アプリ」を無償で提供しています。節電した翌日に節電量や獲得したPayPayポイントを確認できるほか、ランキングやキャンペーンなどを通じてお客さまの継続的な省エネ行動を支援しています。
    「エコ電気アプリ」の利用世帯数は、2025年度実績で約120万世帯となり、2026年度の利用世帯数計画は約130万世帯です。

  • 脱炭素経営を支援する「クラウド炭素管理」

    GHG排出量を算定・可視化するクラウドサービスで、(株)ゼロボードが開発・提供するGHG(温室効果ガス)の排出量を算定・可視化するクラウドサービス「Zeroboard(ゼロボード)」をもとに、当社が提供する法人向けのソリューションなどとの連携を見据えて最適化されたクラウドサービスになります。ゼロボードが持つ脱炭素化に向けた知見やノウハウを最大限に活用して、法人のお客さまの脱炭素経営や持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自社においても「クラウド炭素管理」をより積極的に活用して、GHG排出量算定の精度向上や工数削減につなげ、カーボンニュートラルに向けたグループ全体での取り組みを強化していきます。

  • IoTを活用した自転車シェアリングシステム「HELLO CYCLING」

    当社のグループ会社であるOpenStreet(株)は、モビリティを所有せずに移動手段として利用できる環境に優しいシェアモビリティサービスを提供しています。シェアサイクリングプラットフォーム「HELLO CYCLING」とマルチモビリティシェアサービス「HELLO MOBILITY」により、自転車・スクーター・超小型EVを一つの拠点から貸出できる「マルチモビリティステーション」を各自治体やパートナー企業と連携し展開しています。これにより、まちの交通利便性の向上を実現する他、各車両に利用する電力の一部を再生可能エネルギー由来の電力で供給し、低炭素社会の実現に貢献します。今後も再生可能エネルギーを利用した電動モビリティの普及を目指し、地球環境と共存する社会の実現に取り組んでいきます。

  • 自然災害の影響を受けない成層圏通信システム「HAPS」

    地上約20キロメートルの成層圏から通信ネットワークを提供する、成層圏通信システム「HAPS(High Altitude Platform Station)」サービスの商用化に向けた取り組みを推進しています。山岳部や離島、発展途上国など、通信ネットワークが整っていない場所や地域に安定したインターネット接続環境の構築が可能となるとともに、地上の影響を受けることなく安定した通信ネットワークを提供できるため、大規模な自然災害発生時における救助や復旧活動への貢献も期待できます。2022年1月にはHAPS事業に資金使途を限定したESG債(HAPSボンド)を発行し300億円を調達しました。

  • 分散型AIデータセンターの構築

    当社は、AIと共存しAIが自律的に協調する次世代社会への発展には、膨大なデータの生成・処理を可能にする次世代社会インフラの構築が必要と考えています。現在のデータセンターは都市部に集中しており、このままデータ処理が増え続けると都市部の停電のリスクが高まります。そこで、大規模な計算能力を持つデータセンター(Brain Data Center)を全国に分散配置することを計画しています。2024年には北海道苫小牧市に大規模な計算基盤などを整備した北海道苫小牧AIデータセンターの建設を開始しました(2026年度開業予定)。

  • 光電子結合ネットワークの全国展開

    当社は、Beyond 5G/6Gを見据えて、増加するデータ通信の需要を満たしつつ、カーボンニュートラルを達成するネットワーク建設を目指し、富士通の次世代光伝送装置を用いた全光通信ネットワークの全国展開を2023年10月に完了しました。当社が全国展開を完了したAll optical networkは、通信ネットワークの全ての領域に光の技術を用いており、All optical技術対応機器との接続および水冷トランスポンダー技術の適用により、消費電力を従来比最大90%削減しました。また、従来型設備との接続時も、最新の光電変換技術により従来比約50%の低消費電力化を実現し、あらゆる接続環境で高い電力効率を発揮できる環境配慮型ネットワークです。また、通信性能の向上も図り、1対の光ファイバーを用いて、従来の約2倍となる最大48.8Tbpsの大容量・高速伝送も実現しています。

    [注]
    1. 従来比:ソフトバンクが従来使用している機器との比較
  • インターナルカーボンプライシング(ICP)制度導入

    気候変動への対応を強力に推し進めるために、2024年度にインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を拡充しています。対象範囲をスコープ1、2とし、CO2排出量削減効果を得られる一部の設備投資においてインプリシットカーボンプライス(18,000円/t-CO2)を設定し、より脱炭素化を推進する設備導入を促進しています。

  • カーボンクレジット活用におけるスタンスの表明

    当社グループは「パリ協定」に賛同し、2050年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目指しています。SBTiガイダンスを参考にスコープ1~3の排出量削減を最大化することを最優先に取り組んでいます。残余排出量については、インセット活動やカーボンクレジット活用によってオフセットする手段の検討も進めています。
    カーボンクレジットに関しては、調達および創出する際の質の高さを重視し、生物多様性や地域社会、人権などへの影響およびコベネフィット(共通便益)への配慮も考慮した活用スタンスをまとめています。

c. 戦略のレジリエンス

当社は、世界全体の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5℃以下に抑えるための科学的根拠に基づくGHG排出量削減目標・ネットゼロ目標の達成に向けた移行計画として、サプライチェーン全体の排出量削減ロードマップを作成しました。
ロードマップ策定のため、環境省の「令和4年度大企業のサプライチェーン全体の脱炭素化推進モデル事業」に参画し、取引先に対して排出量削減に関するガイドラインを展開し、パリ協定に沿った排出削減目標の設定と進捗状況の公表などについて要請しました。今後、ネットゼロへの移行に向けて、自社の活動を短期(2022年~2025年)・中期(2026年~2030年)・長期(2031年~2050年)の3段階に応じて以下の施策を実施します。

スコープ1、2の排出量削減

  • 最新テクノロジーを活用した省エネ対策

    • 通信設備の省エネ化の推進
    • AIやIoTを活用したオフィスのスマートビル化
    • 次世代光伝送装置を用いた光電子結合ネットワークの全国展開
    • 超分散コンピューティング基盤の構築(xIPF)によるエネルギー消費効率の改善
    • 環境配慮自動車の導入
  • カーボンニュートラル電力への切り替え

    • 事業に使用する電力のカーボンニュートラル電力化(順次)
    • 分散型AIデータセンターの推進
    • エネルギーの地産地消の実現

スコープ3の排出量削減

  • ステークホルダーとの協働

    • 取引先に対する排出量削減ガイドラインの展開
    • 取引先と協働した排出量の削減(カテゴリー1、2)
    • 省エネルギー商品・サービスの提供
    • 商品の再配達削減の実施

その他

  • 最新技術等の活用やオフセット

    • 環境負荷の少ない通信インフラ「HAPS」の実現
    • 残余排出対策として中和クレジットやCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)等の活用検討
2050年ネットゼロにむけた移行計画
[注]
  1. SBTネットゼロ目標およびSBT短期目標はSBTi認定済みとなっており、基準年排出量および削減目標についてはSBT認定内容をもとに記載しています。
  2. 移行計画は2025年6月時点の計画であり、今後の事業戦略に応じて修正する可能性があります。

排出量削減ロードマップに対する影響と対応

ネットゼロ目標の達成に向けた移行計画として作成したサプライチェーン全体の排出量削減ロードマップおよび対応の内容について、個々の対応が社会に与えるポジティブおよびネガティブな影響を洗い出しています。課題となる影響に対しては対応策も検討しています。

区分 削減対応の内容 社会に対する
ポジティブ影響
社会に対する
ネガティブ影響
影響(課題)
への対応
スコープ1 社用車のHV/EV化
  • 交通分野の温室効果ガス排出削減拡大
  • HV/EV市場の拡大
  • インフラ整備/設備投資コスト増
  • 停電時/渋滞等交通機能への影響
  • インフラ整備/拡充の行政・業界団体要請
  • HV/EVの利用による需要拡大
設備/機器の省エネ(最新機器の入替等)
  • 省エネ/低炭素製品・サービスの投資/供給増
  • 電力使用の効率化/最適化
  • 設備投資コスト増
  • 既存機器の廃棄増
  • 需要拡大による生産コスト低減
  • 機器のリユース/リサイクル推進
スコープ2 オフィス/拠点の省エネ化(スマートビル等)
  • 施設・建物の電力使用効率化
  • 設備投資コスト増
  • スマートビルの利点PR
事業で使用する
電力のカーボンニュートラル化
長期PPA※1契約
  • エネルギー利用増に対する脱炭素実現
  • 再生可能エネルギー需要創出
  • 再生可能エネルギーのマーケット供給量減
  • 再生可能エネルギー/カーボンニュートラル電力の調達最適化
カーボンニュートラル電力※2の使用
  • カーボンニュートラル電力の需要創出
  • 多様な排出係数0電力系統の土壌形成
  • カーボンニュートラル電力の価格上昇
電力使用最適化 分散型データセンター
  • AI/通信の国際安全保障担保
  • 災害/インシデント時の冗長化
  • データ処理/電力利用の最適化
  • エネルギー/水/資源など自然資本影響
  • データセンター開発・運用時の環境影響への配慮・管理徹底
革新型バッテリー/
AEMS※3
  • 電力使用の効率化/平準化
  • グリーントランスフォーメーション分野の新技術/新市場の創出
  • 希少資源の調達/廃棄等バリューチェーン影響
  • 調達資源および廃棄物の管理徹底
省エネ/低炭素調達の推進
(インターナルカーボンプライシング等)
  • 社会全体の温室効果ガス排出削減
  • 省エネ/低炭素製品・サービスの投資/供給増
  • サプライヤー負担増(2次/3次含む)
  • サプライヤーとの対話促進(ガイドライン/説明会等)
スコープ3 取引先との共創による脱炭素推進
  • 産業/企業の脱炭素対応加速
  • グリーントランスフォーメーション分野のサプライヤーの競争力向上
  • 省エネ/低炭素製品・サービスの投資/供給増
  • 設備投資/製造コスト増
  • サプライヤー負担増(2次/3次含む)
  • サプライヤーとの対話促進(ガイドライン/説明会等)
データセンター等設備開発の低炭素建材/機器調達
  • 省エネ/低炭素製品・サービスの投資/供給増
  • 設備投資コスト増
  • 取引先の対応負担増
  • サプライヤーとの対話促進(ガイドライン/説明会等)
  • 環境配慮素材・建材の調達・選定検討
省エネ製品・サービスの提供
  • 低炭素製品・サービスの利用促進
  • 顧客の省エネ促進
  • 製品・サービス選択の制約
  • 製品・サービスの魅力度向上
企業向けCO2可視化サービス提供
  • 企業の脱炭素対応促進
  • 企業の温室効果ガス算定対応の効率化
  • 企業の一時的導入負荷
  • 提供サービス/プランの魅力度向上
家庭向け再エネ・節電サービス提供
(自然でんき/エコ電気アプリ等)
  • 一般消費者の再生可能エネルギー需要拡大
  • 家庭の節電促進・電力利用の平準化
  • 生活利便性低下
低排出手段の出張・移動
(HV/EV/鉄道利用・リモートワーク)
  • 交通分野の温室効果ガス排出削減拡大
  • 交通渋滞/通勤ラッシュ緩和
  • 企業の経費削減
  • 柔軟な働き方普及/ウェルビーイング向上
  • 交通/モビリティ分野の市場縮小
  • 産業界や取引先との共創による働き方の転換
効率的な輸送・配送
  • 交通分野の温室効果ガス排出削減拡大
  • 交通分野での新技術の開発・投資拡大
  • 配送分野のHV/EV化拡大
  • 物流のモーダルシフト拡大
  • 配送システムの最適化拡大(再配達減等)
  • 輸送・配送会社の設備投資コスト増
  • 配送システムの変革による影響(日数/量等)
  • 輸送・配送会社との対話
  • AI等活用した配送の最適化
残余排出への対応 インセット(CDR※4活動)
  • CDRプロジェクトの安定化(資金投入)
  • 森林保全/生物多様性保全への貢献
  • 新技術分野の研究開発/投資促進
  • 需要家離反によるプロジェクト頓挫発生
  • 政府/業界団体と連携した基準・仕組み標準化
クレジットによるオフセット
  • カーボンクレジット市場の活性化
  • 企業の残余排出対応の促進
  • 低品質カーボンクレジットの流布
[注]
  1. ※1
    Power Purchase Agreement:電力販売契約。再生可能エネルギーの長期調達契約
  2. ※2
    排出係数が0の電力
  3. ※3
    AI Energy Management System:AIによる電力需要予測機能を搭載し、充放電を最適制御するシステム
  4. ※4
    Carbon Dioxide Removal:大気中のCO2を除去・固定する取り組み

排出量削減ロードマップに対する
ステークホルダーエンゲージメント

排出量削減ロードマップの達成に向け、バリューチェーン、業界団体・関連イニシアティブ、政府・公的機関・市民社会との対話を通じて意見・知見を収集しています。

ステークホルダー区分 削減ロードマップ達成に向けた関与・意見収集の概要
バリューチェーン
  • サプライヤーへのサステナビリティ調達調査や説明会等を通じた、課題/要望の収集
  • ハンドブック配布や排出量算定ツール提供による、サプライヤーの削減対応支援
業界団体・関連イニシアティブ
  • 団体/イニシアティブへの参画を通じた脱炭素化に関する動向/事例の情報収集と意見交換を実施
    (例:JCI、JCLP、RE100、GSMA、TCA、GXリーグ、Green x Digitalコンソーシアム、慶應義塾大学KGRI Keio STAR等)
政府機関・公的機関・市民社会
  • 政府/公的機関が主催する有識者会合や検討会への参加
  • カーボンニュートラル、GX、データセンターの脱炭素化に関する政策動向
  • 課題についての意見・知見の収集

リスク管理

a. リスクの特定、評価プロセス、
全社管理プロセスへの統合

当社は、コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの各事業について、生物多様性や気候変動などの自然関連課題を含むサステナビリティに関する当社および当社事業の隣接地域、サプライチェーンの上流・下流を含めたリスクを特定しています。
リスクの特定においては、環境委員会の委員から指名された担当者で構成されるワーキンググループが関係各部門と検討を行い、シナリオ分析を実施し、財務影響度等を検討したうえで、ESG推進担当役員のもとで評価しています。
また、ESG推進委員会等の関連会議体で協議し、重要なリスクについては、全社的リスク管理プロセスに連携しています。

b. 管理プロセス

当社グループは、サステナビリティに関するリスク・機会を全社的リスク管理のプロセスに組み込み、特定および評価を行っています。特定したリスクの顕在化を防止するため、社内でさまざまな角度から分析する管理体制を整えています。各部門が現場で各種施策を立案する際にリスクを含めた検討を実施するとともに、リスク管理の最高責任者であるCROの下、事業部門から独立した組織であるリスクマネジメント室が、全社的・網羅的にリスクの把握と対策状況の確認を定期的に実施し、リスク管理委員会(CEO、社内の取締役、CRO、および各部門を統括する役員で構成)に報告しています。リスク管理委員会では、リスクの重要度や対応する責任者(リスクオーナー)を定め、対策指示などを行い、CROを通じて状況を取締役会に報告しています。内部監査室は、これら全体のリスク管理体制・状況を独立した立場から監査しています。

指標と目標

a. リスクと機会の評価に用いる
指標

温室効果ガス排出量スコープ1(自らによる温室効果ガスの直接排出)、スコープ2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)およびスコープ3(当社の事業活動に関連する他社の排出)をはじめとする環境負荷データの管理を行っています。

b. 温室効果ガス排出量

2025年度の温室効果ガス排出量はスコープ1:9,470t-CO2、スコープ2:664,619t-CO2、スコープ3:18,285,009t-CO2になります。2025年度のカバレッジは基本的に100%になります。

c. 目標および実績

スコープ1、2の目標として、2030年までに事業活動で使用する電力などによる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル目標を設定しました。全ての自社の施設・設備での使用電力についても温室効果ガス削減を推進します。
当社は、2030年度までに事業活動で使用する電力をカーボンニュートラル電力100%にすることを目指し取り組みを進めています。あわせて、目標達成に向けて、再生可能エネルギーの長期調達契約(PPA)を締結するなど、再生可能エネルギーの活用を進めています。
2023年6月には、2050年度までにグループ連結でスコープ1、2、3を含む事業活動に関連する全ての温室効果ガス排出量(サプライチェーン排出量)を実質ゼロにする「ネットゼロ」の達成を宣言しました。

カーボンニュートラル2030~温室効果ガス排出量実質ゼロへ。~
ソフトバンクのネットゼロ~温室効果ガス排出量をサプライチェーン全体で実質ゼロへ。~

SBTネットゼロ認定を取得

Science Based Targets

スコープ3を含む当社の温室効果ガス排出削減目標は、国際的気候変動イニシアチブのSBTi(Science Based Targets initiative)によって科学的根拠に基づいた「SBT(Science Based Targets)」に認定されています。SBTの目標はこちらをご参照ください。

免責事項

将来の見通しに関する注意事項
当報告に記載する計画、予測、戦略などには、作成時点で入手可能な情報に基づき当社が判断した将来見通しが含まれています。このような事項は見通しと大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。業績に影響を及ぼすリスクや不確定要素の中には、当社の事業環境を取り巻く自然環境、経済情勢、市場競争、為替レート、税、またはそのほかの制度などが含まれます。