自治体×ソフトバンクの未来
藤枝市からはじまる新たなICT活用

『週刊東洋経済』2017年11月25日号に掲載された記事をご紹介しています。

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静岡県藤枝市がソフトバンクと組んで、IoT実験の街として新たな試みを始めている。今年8月、藤枝市は全国に先駆けてIoT活用に求められるLPWA(低消費電力広域)ネットワークを整備。事業者と共に実証実験を開始すると同時に、市がさまざまなサポートを提供しつつ、地方創生や働き方改革に取り組む。これまでの経緯と目指す方向性について、藤枝市長の北村正平氏と、ソフトバンク副社長の今井康之氏の対談が行われた。

自治体とソフトバンクが包括連携協定を締結されるのは藤枝市が初めてだそうですね。

北村 学習指導要領の更新に先駆けてプログラミング教育を実践するために、ソフトバンクの「Pepper」を活用できないかと相談をもちかけたことがきっかけでした。AI、IoT、ロボットという事業に注力しているソフトバンクなら、我々が進めたい地方創生の取り組みをより効果的に推進できるものと考え、2016年6月に「健康」「教育」「環境」「危機管理」といった市民生活に直結する事業を網羅する包括的な連携協定を結ぶ運びとなりました。

藤枝市役所にて、自治体とソフトバンクのICT活用の未来について語った北村氏(右)と今井氏(左)。ともに、街のため、人のために何ができるのかという熱い思いを持ち寄った。

今井 康之ソフトバンク代表取締役副社長兼 COO

今井 我々の社是は「情報革命で人々を幸せに」すること。今回、いち早く決断された藤枝市の事例を通して、我々が推進しているIoTのプラットフォームをともに進化させていきたいと考えています。

そもそもICT活用による地方創生や新たに立案された「ふじえだ健康都市創生総合戦略」を推進されようと思った背景とは何でしょうか。

北村 正平静岡県藤枝市長1946年生まれ。69年に東京農業大学卒業後、静岡県庁に入庁。国体局長兼全国障害者スポーツ大会局長、農業水産部長などを務める。2008年藤枝市長就任。市民生活の基本である4K(健康、教育、環境、危機管理)を政策の柱とし、人々から真に「選ばれるまち藤枝」に向け全力で取り組んでいる。

北村 静岡県は、人口減少進行が顕著な地域です。幸い、藤枝市は増加傾向にありますが、首都圏に進学した若者のUターンが非常に少なく、特に女性は3割程度しか戻ってきません。こうした状況をふまえ、若者や子育て世代が移住・定住するまちづくりを目指し、「子どもの未来を創る」「産業を育て、仕事を創る」「働き方改革」の3つを地方創生の目的におきました。そして、ICT活用こそ目指す方向性を実現させるものと考え、17年4月にICT推進室を設置し、ICT活用を促す環境づくり、活用できる人材づくりに取り組むことになったのです。

北村 正平
静岡県藤枝市長
1946年生まれ。69年に東京農業大学卒業後、静岡県庁に入庁。国体局長兼全国障害者スポーツ大会局長、農業水産部長などを務める。2008年藤枝市長就任。市民生活の基本である4K(健康、教育、環境、危機管理)を政策の柱とし、人々から真に「選ばれるまち藤枝」に向け全力で取り組んでいる。

ソフトバンクのIoTプラットフォームを活用して進めようとしている藤枝市の実証実験の概要についてお聞かせください。

北村 IoT活用に求められるLPWA(低消費電力広域)ネットワークは今後、全国で整備が進められていくと言われています。それに先駆けて、市のほぼ全域にIoT通信基盤を整備。最先端技術の導入促進と、新たな市民サービスの創出を図り、全国各地の事業者に実証実験の公募を行いました。公募では市内で新しい技術が実験されることに主眼をおいた「一般型」と、市で補助金を交付し、支援も行う「公共テーマ型」の2つを実施。一般型では11事業、公共テーマ型では8事業を採択し、順次取り組みが進められています。

今井 地方創生の「まち」「ひと」「しごと」という柱において、我々は多くの活用事例を有しています。「まち」では社会インフラのIoT活用として、過疎化によって路線バスを維持できなくなった地域でも、自動運転で運行できる実証実験をすでに行っています。「ひと」では女性活躍のために保育所と連携する仕組みづくりや、高齢者の徘徊を防ぐ見守り支援サービスも提供。「しごと」では、AIやRPA(ロボットによる業務自動化)を通して、事務処理の効率化を図っています。

地域の事業所・市役所として推進する「働き方改革」に、今回の取り組みがどのように寄与できるとお考えですか。

北村 実証実験では、IoTで業務がどのように変わるかを目の当たりにする機会が増えています。こうした機会は職員の意識改革につながっていくはず。役所の仕事には、いわゆる事務処理や手続きといった業務がありますが、これはIoTとAIの活用により効率化が図れるもの。その分、職員の力をより政策形成に注ぐことができると考えています。

今井 当社ではコールセンターに寄せられた、お問い合わせのデータをAIで解析することで、お客様が満足するポイントをより把握しやすくなりました。ほかにも商品の仕様や業務に関する質問にAIを用いて回答するアプリを導入するなど新しい試みで、社員間の業務効率化を行っています。

ソフトバンクとの取り組みを通して見た自治体としての展望をお聞かせください。

北村 我々基礎自治体の業務は、市民の皆さんのためでなければなりません。今後はIoTとAIを連動させたデータの活用により業務を効率化し、職員はより市民サービスの向上に努めるべきであると考えます。「市役所業務におけるAI活用」「高齢者の安全安心な暮らしのための見守り」「交通事故ゼロのまち」などの地域課題をソフトバンクの知見を得ながら、取り組んでいきたいです。

今井 ソフトバンクの強みとは、経営のスピード感や統計データなどに基づくデータ経営(EBPM)を肌感覚で実施しているところです。おかげさまで数多くの自治体の皆様からお声がけもいただいております。今後も最先端のテクノロジー活用を通して自治体の皆様の課題を解決するご支援をしていきたいと考えています。

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