ドローンの「今」の話をしよう。2020年、ドローンに任せられる20の仕事

2019年12月13日掲載

目次

2019年現在、ドローン活用はどこまで広がっているのか。これまでドローンによる宅配、ドローンタクシーなど未来の話は数多く展開されてきたものの「今後数年以内に実際にドローンがどのようにビジネスに活用できるか」という議論はあまりされていない。数年前まで遠い未来のことのように語られていたドローンだが、空撮、高所点検、農業利用など、すでに実際のビジネスの現場では導入が進んでいる。
こうした中、ソフトバンクでは日常的な業務でのドローン活用をサポートするドローンサービス「SoraSolution」を提供開始。
前回記事ではドローンの普及を下支えする通信インフラについて、総務省の展望を伺った。

今回は、「SoraSolution」事業を担当する松田憲史郎氏に、「SoraSolution」が提供するサービスと、ドローンビジネスのユースケースを聞いた。

松田憲史郎 氏

ソフトバンク株式会社
クラウドエンジニアリング本部 IoTサービス統括部
IoTプロダクト企画開発部 プロダクト企画課

2019年、ドローンをめぐる環境をおさらい

ドローン活用によってもたらされる「空の産業革命」。政府は2022年度までに、人がいるエリアでの目視外飛行を実現することを目標に掲げており、ドローン活用を広めるための規制緩和を順次進めている。
経済産業省が発表する「空の産業革命に向けたロードマップ」では、ドローン利活用のレベルを4段階に設定。

2019年時点では、レベル2の「目視内の自律飛行」が認められている。今後はレベル3「無人地帯での目視外飛行」、最終段階のレベル4「有人地帯での目視外飛行」を目指し、環境整備・技術開発が進められていく。「SoraSolution」を含め、現在可能なドローンの産業利用はレベル2の「目視内の自律飛行」にあたる。今後3年で規制緩和が進むことで、ドローンが活躍する仕事の幅はさらに増えていくだろう。

ドローンの空撮を手軽にする「SoraSolution」

企業のドローン活用を広げるためには、ドローンの安全飛行が絶対条件。そして、ドローンが特別なものではなく、自動車やPCを操作するのと同じように、誰でも気軽に扱えるようになることが必要不可欠だ。
ソフトバンクが提供する「SoraSolution」が従来のドローンサービスと大きく異なるのは、操縦者の技術に関係なく、誰でも気軽にドローンを利用できる点だ。

「SoraSolution」事業を担当する松田憲史郎氏は次のように話す。
「『SoraSolution』の特長は、ドローンの機体手配、ソフトウェアとの連動、飛行ルート設定、各種手続き、保守までをワンストップで提供できること。ですから、ドローンをまったく使ったことがない方でも、すぐに業務利用を開始できます。
ドローンを安全飛行させるためには、ソフトウェア、ドローン機器、GPSがしっかりと連動する必要があります。『SoraSolution』ではこの3つをバランス良く取り入れるべく、世界中の産業ドローンで7割のシェアを誇るDJI社のドローン、ドローンの制御を簡単に行うことができるSENSYN ROBOTICS社のソフトウェアを採用しました」(松田氏)

「SoraSolution」の機能は次の4つだ。

ルートを設定するとボタン1つで自動航行し、決められたポイントで自動撮影するのが基本機能。
加えて、ドローンが撮影したデータをクラウドにアップすると、自動でGoogleマップ上に撮影画像が紐づけられたり、画像にコメントを入れて指示や情報共有もすることができる。
ドローンにはさまざまな活用の可能性があり、活用方法に応じて多様な機能を搭載することもできるが、本サービスはドローンの簡単に誰でも扱えることを重視し、あえてシンプルな機能に限定しているという。

「『SoraSolution』は日常の業務で利用する上で最低限の機能をまとめたサービスです。慣れていない人でも、毎日決められたフライトポイントに行き、ボタンを押すだけで、ドローンが決められたコースを飛行して、必要な画像を撮ってきてくれます。
現在は決められたルートを航行し、定点で画像を撮影することに特化させていますが、将来的には、ソフトバンクのさまざまなソリューションと連動し、蓄積した画像データのAI自動解析やリアルタイム伝送などにも対応させていく考えです」(松田氏)

「SoraSolution」によって、さまざまな業界でのドローン利活用が推進される。
例えば、人が目視で確認していた点検作業をドローンで代替することによって、人件費の削減や業務の大幅な工数削減が期待できる。また、定点で撮影した画像を蓄積することで、属人性が高い業務のノウハウをデジタル化し、共有・継承することも可能となる。
では、実際にどのようなビジネスシーンでドローン活用が見込めるのか。

松田憲史郎氏は、「ドローンに向いている仕事」を検討する上で、「安全性」「鳥瞰(ちょうかん)」「リアルタイム性」の3つのキーワードを挙げた。
「まずは安全性。高所や火山エリア、災害地など、人が行くには危険な場所での作業はドローンに向いています。次に、鳥瞰。空からの視点で撮影することで、今までは見えなかったものが見えてきます。3つ目がリアルタイム性。今後、通信網が整備されてドローンが撮影した画像をリアルタイムで転送・確認できるようになれば、ドローン活用の場はさらに広がるでしょう」(松田氏)

2019年、ドローンに任せられる仕事20

では、ドローンがすでに担うことができる業務には、どのようなものがあるか。
実証段階のものも含め、今後数年以内にドローンが行っている可能性が非常に高い仕事をピックアップした。

【保守点検】

1 ビルの壁面、風力発電、送電線、橋梁、橋脚などの高所点検
高所点検はドローンの得意分野。人が目視点検するよりも安全に、効率良く確認ができる。AIと組み合わせることで、さびやひびを自動解析することも可能に。巨大なインフラ設備の点検業務の効率化、人手不足対策になる。

2 太陽光パネルの定期目視点検
広大な敷地に作られるメガソーラーでは、定期的に目視点検を行っている。ドローンでまずは異常箇所を発見することで、点検にかかる時間を大幅に削減できる。もちろん、民家の屋根に設置した太陽光パネルの点検にもドローンは役立つ。

3 文化財やプラントなどの屋根点検
住宅、文化財、工場などは数年ごとに建物の定期検査を行うことが定められている。特に文化財などは屋根確認用の足場を組むだけでも予算と時間がかかる。その点、ドローンを使えば、その場でさっと飛ばすだけで確認が終了する。

4 広大な芝生の点検
ゴルフ場や競技場などの芝生の点検でドローンを活用するケースは増えている。広大な敷地をドローンが定点で撮影し、データを集めることで、日々の管理業務の効率がアップする。

【農業】

5 植物の生育状況確認
農地の土壌水分量、適切な収穫時期、雑草や害虫の発生状況などをドローンで確認。上空から観察することで、生育状況のムラもわかる。また、定期航行してデータを蓄積することで、より精度の高い農業が可能になる。

6 農薬散布
ドローンを使って空から農薬を散布する取り組みも広がっている。ドローンで把握した生育状況にあわせて、必要な箇所に必要な量だけ散布できる。

7 森林情報の可視化
人材不足が問題となっている林業において、森林の資源調査や測量などの業務にドローンを活用できる。ドローンに搭載したカメラや測量レーザーにより、森林の情報を可視化することで、伐採等の手入れすべきポイントを把握できる。

【建設】

8 工事の進捗管理
建設途中の建物を定点で毎日撮影することで、進捗状況を確認できる。施工主への進捗報告のほか、完成後にタイムラプスのように画像をつなげて、プロモーション利用することも。

9 工事中の建物のゆがみ確認
高層ビルの建設の際などに、上空から撮影して図面と照らし合わせ、建物のゆがみを確認することができる。

10 更地の土の量の把握
土木領域では、ドローンで上空から更地を確認し、土の量の把握などに役立てられている。

【防災】

11 線路の倒木点検
台風通過後など、線路の倒木や異常の点検にもドローンは活躍する。広域の線路を目視で点検するのは時間がかかるが、まずはドローンで確認することで作業の効率化につながる。

12 災害時の被災状況確認
河川決壊や土砂崩れなどの場所をいち早く特定するのに、ドローンが役立つ。特に、人の立ち入りができないエリアの探索、地上からの視点では見えない場所の確認作業では、ドローンの本領が発揮される

13 火災時の消火活動支援
消火活動の際、上空から火の手が上がっている場所を発見し、放水位置を示すという活用も想定されている。自治体が導入に積極的。

14 救助者の捜索
赤外線カメラなどを搭載することで、逃げ遅れた人の居場所を空から捜索することも可能になる。

【物流】

15 過疎地域、離島の物流
住民の高齢化、過疎化などで買い物が困難なエリアや、離島などで、ドローンを使った日用品、食品、医薬品などのドローン配送の実証実験が各地で行われている。

16 血液輸送
緊急時、病院間での血液輸送は現在主に車で行われているが、将来的にはドローンを使った輸送も可能になるかもしれない。アフリカではすでにワクチンなどの輸送にドローンが活用されている。

【監視】

17 不審船の監視
海上での不審船や密漁の監視にドローンを活用することが考えられる。

18 フライト監視カメラ
立ち入り禁止区域に人が侵入すると、ドローンが飛び立って撮影するというユースケースがある。

【鳥獣害対策】

19 鳥獣の生息実態把握や捕獲
エリア内にいるイノシシなどの生息実態の把握や、人里に下りて来ないように一定エリアを出たらドローンで音を発生させて追い払ったりなど、鳥獣害対策にもドローンが使われている。

【文化財の保存】

20 三次元データ管理による文化財保存
ドローンが撮影した映像やレーザー計測をもとに、重要な文化財を3Dモデリングデータで保存。重要な文化財が災害で倒壊したり、火事で消失した場合でも、元図面なしに復刻することができるようになる。また、VR・ARコンテンツの元データとして活用することもできる。

データを蓄積することで、将来の多様な活用につながることも

このようにドローンを活用することで、業務の効率化、人手不足の解消など、さまざまな社会課題の解決につなげることができる。また、今までは見えなかった上空からの視点で俯瞰(ふかん)することで、新しい発見につながることもある。それは、産業を新たなフェーズへとステップアップさせる足がかりになるだろう。

企業が今、ドローンの活用に取り組む理由について、松田憲史郎氏は次のように話す。
「ドローンの活用方法がよくわからないという場合でも、まずはデータを定期的に集めておくことで、先々、目的にあわせていろいろな用途に転用できる可能性があります。AI、画像解析の精度はどんどん上がって行きます。いろいろな条件下でデータを集めておき、活用できる環境に備えておくことが、これからは重要になると考えています。
2020年にはドローンのセルラー対応がスタートする予定です。ドローンにSIMが搭載され、リアルタイムでのデータ伝送が可能になります。そうなれば、ドローン活用の幅は一気に広がっていくのは間違いありません。通信事業者であるソフトバンクは、行政と連携しながら、『SoraSolution』の機能拡張を順次進めていく予定です。
空の産業革命の第一歩として、まずは皆さんの日常業務でドローンの活用をし、その可能性を肌で感じていただきたいと考えています」(松田氏)

後記

今回はドローンに代替できる仕事を20個紹介したが、将来的にさらに広がっていくことが予想される。私たちの身の回りのサービスにドローンが導入され、街を歩くと当たり前のようにドローンが飛行している光景を見る日も近いだろう。まずは、「ドローンで自分たちの業務がどう変わるのか」を想像することで、新たなドローン活用の可能性が広がっていくに違いない。

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