「契約前」からはじまる、ソフトバンク流「カスタマーサクセス」とは

2020年10月19日掲載

目次

  • ソフトバンクでは2011年からカスタマーサクセスメニューとして導入支援や利活用促進などのフォローを実施
  • 「契約前」からサポートすることで顧客のICTツール活用成功を後押し
  • カスタマーサクセスメニューが付加価値となり、ソフトバンクが選ばれる理由になる

商品性能重視から顧客体験重視へと時代が移り変わる中で、多くの企業が「自社で買ってもらう理由」に頭を悩ませている。また、ニューノーマルな時代においては、かつて対面の営業力で売れていた商品も、シビアな比較・検討にさらされることが予想される。

通信事業者も商品での差別化が難しい業界の1つ。今では各通信事業者が同じスマートフォンを販売している。ソフトバンクを選んでもらうためには──?ソフトバンクの1つの解が「カスタマーサクセス」だった。同社法人プロダクト&事業戦略本部法人サービス企画推進室カスタマーサクセス課 仲田ゆい氏と石原亮氏に話を聞いた。

仲田ゆい

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部
法人サービス企画推進室
カスタマーサクセス課

石原亮

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部
法人サービス企画推進室
カスタマーサクセス課

「顧客の成功」を後押しするカスタマーサクセス

SaaS型(Software as a Service)のサブスクリプションサービスのように、継続利用を前提とするサービスでは社員への浸透、高い活用率や満足度など、顧客の成功こそがチャーン(サービスの解約)を防ぐことにつながる。それゆえに、売って終わりではなく、提供サービスを通じて顧客が成功することが、サービス提供側のビジネス拡大においても重要だ。

これらの「顧客の成功」を後押しする職種を、いわゆるカスタマーサクセスと呼ぶ。サブスクリプションサービスの盛り上がりと共に、ここ2、3年で頻繁に聞かれるようになったカスタマーサクセスだが、ソフトバンクにおけるカスタマーサクセスの歴史は2011年まで遡る。

――ソフトバンクのカスタマーサクセス課のミッションを教えてください。

仲田:あたらしいICTツールを導入したとき、お客さまは1つの機能が使えるようになっただけで「ツールが使えた」と思ってしまうものです。

例えば、Slackであればチャットをできるようになっただけで「使えた」と思ってしまう。しかし、それはSlackの機能の一部でしかありません。ファイル共有から、botを使った業務の自動化など、実はさまざまな機能が存在します。

G Suiteであれば、意外と知られていない機能ですがWebサイトを制作することもできるんです。それを知らないと新たにドメインを取得してWebページを外部で作成することになります。

ソフトバンクは日本で初めてiPhoneを販売した通信事業者です。皆さん、当時のことをお忘れかもしれませんが、スマホが登場したばかりの頃は、法人でどのように活用できるのか誰も分からない状況でした。そのため、2011年、当時はまだ確立されていなかった「法人でのスマホ活用」をサポートしていく部門として、私たちの部署が始まりました。

 

石原:スマホの導入はもちろんのこと、現在、ソフトバンクでは法人のお客さま向けに、働き方を改善するための各種ICTツールもご提案しています。

例えばGoogleが提供するグループウェアサービス「G Suite」や、Microsoftが提供する「Office 365」など、近年はクラウドサービスの他にもAIやRPA、ロボティクスなど幅広いラインナップを揃えています。

とはいっても、これらのツールの導入は業務改善活動のスタート地点に過ぎません。私たちのミッションは、お客さまにツールを徹底的に使いこなしていただき、最終的な「お客さまの成功」を後押しすること。

そのための取り組みとして、導入いただいたお客さまには、ツールの使い方の基礎を短い時間で理解いただくための研修を有償で実施。導入後にはユーザ企業内で調査を実施し、効果検証も行います。

最近では、導入に先立ってセミナーも実施し、好評をいただいています。

ソフトバンク流カスタマーサクセスは「契約前」からスタート

――カスタマーサクセスというと「契約後」の支援を指すのが一般的です。カスタマーサクセスの部門が「契約前」からサポートするのは特徴的ですね。

仲田:デジタルシフトの第一のハードルとして、「どのツールを選ぶか」があります。

ICTツールは多岐にわたり、さらに日々新たなサービスが生まれています。従来のように営業担当がお客さまにどんどん商材をご紹介するとあまりにも選択肢が多く、お客さまはそもそも自分たちが何を求めていたのかを見失ってしまうことになりかねません。

次々とツールをやみくもに導入してしまうのはリスクが高い。お客さまが抱える課題にマッチしたサービスでない限り、デジタルシフトを成功させることは難しいからです。

つまり、カスタマーサクセス課として顧客の成功を後押しするためには、ツール選定の部分からサポートする必要があるのです。

石原:そこでカスタマーサクセス課では、導入に先立ってセミナーを実施しています。働き方改革をオンサイトでお客さまと一緒に考える「Smart Workdesign Seminar」「レゴ®シリアスプレイ®メソッドと教材を活用したワークショップ」、最近ではオンラインで「アフターコロナの働き方ワークショップ」なども開催しています。

まずはセミナー形式で基本的な考え方や緊急事態宣言中にソフトバンクで実践した働き方の事例などをお話します。その後のディスカッションパートでは、私たちがファシリテーターとなり、お客さまが実際にここ数ヵ月でどのような働き方をしてきたかを話し合っていただきます。まずは簡単なテーマから初めて、徐々に掘り下げながら、根底にある課題や解決の糸口を引き出していきます。

 

仲田:また、ユーザ企業に対して「働き方調査」のアンケートによる可視化も実施。自社の結果と、20業種1万人の働き方をリサーチしてきた結果を比較します。業界を横串で見たときに自社のIT化が現在どの程度進んでいるのか、あるいは遅れているのかを把握することが可能です。

こうした導入前の過程を経て、お客さまご自身に現在の課題と、解決のために足りないものを認識していただきます。次のステップとして、ソフトバンクの営業担当とお客さまで話し合い、具体的なツールの導入を検討していく流れです。

お客さま(製造業)の働き方を調査した結果の一部 お客さま(製造業)の働き方を調査した結果の一部

そして導入後は「効果検証」のアンケートを実施し、ツールが実際にどの程度使われているか、どんな効果が出ているかを可視化します。運用してみて「あれが欲しい」「ツールが使いこなせていない」という話になれば、その都度私たちが新たなご提案をしていきます。

iPhoneを導入したお客さまの効果検証を分析した結果の一部 iPhoneを導入したお客さまの効果検証を分析した結果の一部

仲田:G SuiteやOffice 365など、私たちは他社が開発したサービスを取り扱っています。メーカではないソフトバンクの強みは、幅広いラインナップを組み合わせたサービスのご提案が可能なことです。

例えば、あるツールを使用するためにセキュリティが課題になるようであれば、セキュリティ商材をご紹介することもできますし、既存の社内システムと相性のいい他の商材をご提案することもできます。「オールソフトバンク」で済ませられることが、お客さまにとっての利便性につながると考えています。

どうすればソフトバンクを選んでいただけるのか?

――カスタマーサクセスはソフトバンクの中でどのような役割を果たしているのでしょうか。

仲田:例えばiPhoneにしても、今はさまざまな通信キャリアから販売されていて、どこで買っても端末の機能に差はありません。その状況でどうすればソフトバンクを選んでいただけるのか。

フィーチャーフォンの時代は他社と価格で勝負していたのですが、今はソフトバンクの付加価値として「導入したサービスの活用サポート」があります。お客さまの心に寄り添い、課題解決に向けて一緒に走っていく。その役割を担うのがカスタマーサクセスです。

――今後、カスタマーサクセスとしてより力を入れていきたいことは何でしょうか。将来の展望をお聞かせください。

仲田:ICTツールを購入する際に、「導入後のサポート」について導入前から真剣に考えることは、まだまだ少ないと感じます。そのため基本的な機能だけ使って満足してしまうケースも多いです。

使いこなせているかどうかに焦点をあてて、足りない部分はフォローしながらお客さまの活用の幅を広げていくというカスタマーサクセスのノウハウを、もっと多くのお客さまに提供していきたいです。

 

石原:セミナーやワークショップを進めるなかで、数多くのお客さまと接点を持つことができたのは大きな収穫でした。ICT商材の導入では、企業の総務や情報システムの担当者とやりとりをするのが大半なのですが、私たちの活動ではそれ以外の部門の方につながっていくケースも多いです。

こうした出会いは、「お客さまの働き方を改善したい」という私たちの思いをダイレクトにお伝えし、お客さまとソフトバンクの距離を縮める良いきっかけとなっています。

私たちソフトバンクは、お客さまにソリューションを提案する立場であると同時に、テクノロジーの力で自らの課題解決に柔軟に取り組む企業でもあります。

私たちの知見をお客さまと共有し、今後の働き方のヒントを発見しながら、アフターコロナに適した新たなビジネスの形を模索していければと考えています。

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