社長メッセージ

逆境こそ飛躍のチャンス

2016年7月
ソフトバンクグループ株式会社
代表取締役社長 孫 正義

創業から35年——私は2016年という年を、わくわくした気持ちで毎日過ごしています。2013年7月に米国のスプリントを買収して以来、同社の立て直しという大きな課題に直面し続けていますが、気持ちに陰りはありません。そのあまりの難しさに自信をなくしたこともありましたが、現在では、明るい景色がはっきりと見えているのです。

このように、逆境と思えるような状況であっても、別の角度から見れば全く違う景色が見えてくるものです。過去にも同じようなことがありました。2000年にインターネット・バブルが崩壊し、誰もが守り一辺倒になる中で、私は「今こそ最大のチャンス」とブロードバンドサービス「Yahoo! BB」で攻勢に打って出たのです。2001年度から2004年度まで大赤字を出し続けたものの、当社の大きな飛躍につながったのはご存じのとおりです。

これまで、スプリントの立て直しに当初の見立て以上に苦労してきましたが、私自身が陣頭指揮を執り、スプリントの技術陣と共に知恵を絞り出すことで、最も重要かつ困難な通信ネットワークの改善にようやくめどを付けることができました。今後は、同社の業績が反転し、ソフトバンクグループの持続的な成長に貢献していくものと確信しています。

まだやり残した仕事がある

2015年度の連結業績

2015年度の連結業績は、売上高が9兆1,535億円(前年度比7.6%増)、調整後EBITDAが2兆4,389億円(同19.5%増)、営業利益が9,995億円(同8.8%増)、親会社の所有者に帰属する純利益が4,742億円(同29.1%減)となりました。

前年度はアリババ上場に伴う一時益を計上していたため、親会社の所有者に帰属する純利益は減益となりました。しかし、この一時益の影響を除いた親会社の所有者に帰属する純利益は23%の増益となっており、業績は順調に推移しています。

日米の通信事業

国内通信事業では、過去数年間、通信ネットワークを競合他社と遜色のないレベルに改善するために大規模な設備投資を行ってきました。現在、ソフトバンク株式会社のネットワークは競合他社に追いつき、さらに凌駕するほどのレベルにまで改善しています。この結果、設備投資は一巡し、安定したフリーキャッシュフローを創出するフェーズに入っています。

スプリント事業に関しては、私自身が陣頭指揮を執り、通信ネットワークの改善を着実に進めています。その効果は、解約率の劇的な改善という形で目に見え始めています。引き続き日本で培ったノウハウを活用することで、投資額を抑制しつつも、大手2社を上回る通信ネットワークを目指していきます。

このほか、財務活動においても、日本側のバックアップの下、携帯端末とネットワーク機器を活用した資金調達を行い、手元流動性を大幅に改善しました。このように、我々の熱意やノウハウは国境を越え、スプリントのメンバーに伝播し、事業の反転に確実につながっています。

意外に思われるかもしれませんが、当社が2006年に買収した直後のボーダフォン日本法人と現在のスプリントを比較するならば、私は前者の方が困難な状況であったと考えています。当時、ボーダフォン日本法人は携帯電話サービスに最適な“プラチナバンド”を持っておらず、営業現場は疲弊し、ブランドは大きく毀損していました。その当時と比べてみれば、現在はスプリントの反転に向け、自信に満ち溢れています。

インターネット関連企業への投資と投資回収

これまでのインターネット投資は、イーコマースやコンテンツといったグループのビジネスモデルと親和性の高い分野への投資、さらにはトランスポーテーションサービスといった成長分野、かつインドや東南アジアといった成長市場を中心に行ってきました。具体的には、インド最大級のオンラインマーケットプレイス「Snapdeal」やインド・東南アジア最大級のタクシー配車プラットフォーム「オラ」「グラブ」、韓国のイーコマースサイト「クーパン」といったサービスの各運営会社などがあります。これに加えて2015年9月、新たな領域であるフィンテックへの足掛かりとして、米国Social Finance, Inc.(ソーファイ)へ出資しました。

一方で、2016年度に入ってからは、財務戦略の一環として、当社が保有するアリババ株式の一部、ガンホー株式の大部分、スーパーセル株式の全てを売却することを決定しました。

今後5年から10年は当社を牽引

我々の強みは、世界各地で「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を共有する革新的起業家集団が、各事業を率いているところにあります。

私自身スプリントの反転に強くコミットしていますが、スプリントを牽引しているのは同社CEOのマルセロ・クラウレです。また国内通信事業は、ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役副社長であり、ソフトバンク株式会社 代表取締役社長 兼 CEOの宮内 謙が力強く率いてくれています。さらにここ数年重点的に戦略的投資を行ってきたインターネット関連企業においては、才覚のあるリーダーたちが事業を率いてくれています。

そして、2014年9月から当社に参画したニケシュ・アローラは、当社のグローバル化をリードしてきました。2016年6月の任期満了に伴い代表取締役副社長を退任しましたが、彼の持つインターネット関連企業のビジネスモデルやテクノロジーへの造詣、それらの企業の経営陣との幅広い人脈は、当社にとって大変大きな力となりました。

近年、世界各地で若く優秀な経営者が数多く活躍しています。私は彼らと会う中で、当社の今後のさらなる成長において、私自身が当社の成長の妨げになってはならないと感じ、早くに次世代に事業を継承することが必要だと常々考えていました。

具体的には60歳になる誕生日(2017年8月)にニケシュに当社の経営を引き継いでもらおうと考えていましたが、情報産業で本格的な変革が始まろうとしている今日、自身が成さなくてはいけないことがまだまだたくさん残されていることに気付かされました。少なくとも今後5年から10年は、私自身が引き続き当社を牽引していきます。

今後も当社は情報革命を牽引し、これまで人類が解決してこられなかったさまざまな課題を解決し、社会全体に貢献していきます。

[注]